たいせつな人を亡くすとは、どういうことなんだろう。そんなことをぼんやり考えていた。
年始くらいから「人は死ぬタイミングを自分で決められない」ということについてぼんやりと考えている。同じくらいの時期に放送された”不条理な死”がテーマのひとつであるドラマ『アンナチュラル』を見たり、その主題歌『Lemon』を聞いたりしながら、いつも自問自答していた。たいせつな人との別れのときわたしは何を思うのか、と。
だから、なのかもしれないけど手に取る小説も「たいせつな人との別れ」にまつわるものばかりになっている。強く求めたわけでもないのに、選んでしまっていた。
短編集の形で、どれも身近な人の死がテーマになっている。すべての短編が編まれるように「その日のまえに」、「その日」、「その日のあとで」と最後にまとまっていく構成だ。
アマゾンのあらすじはこちら。
僕たちは「その日」に向かって生きてきた―。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。
この本を手にする前に、同じく重松さんが書いた短編集『まゆみのマーチ』を読み返していた。少女が主人公の短編集で、表題の「まゆみのマーチ」も、母親が亡くなる直前の兄妹の話。8年くらい前に読んだときにも「おかあさんが死んだとき、わたしは何を思うんだろう」と想像しながら読んでいた。
それから時は経ち、わたしにもたいせつな家族ができた。母も健在だけど、自分で選んだたいせつな家族がいなくなってしまったら、と考えると怖くて仕方なくなる。いつか来るはずの別れの日=その日を、わたしはどう過ごすんだろう。
物語の主人公は5人。クラスメイトが入院する小学生、突然夫が事故で亡くなった後の家族、余命宣告されたサラリーマン、母親から病気だと言われた高校生、そして「その日」を迎えようとする夫婦と「その日」と「その日の後」。それぞれの思いがそれぞれに広がり、つながっていく。
読んでいて、わたしは「その日」に向けて準備ができたほうがいいよなあと思った。これは、わたしがこの世から去る場合の話。じゃあ、たいせつな人の「その日」はどうだったらいいのかな、やっぱり穏やかに別れを伝えたいかなあ。でもその前に、いまの煩わしくも愛おしい日常をたいせつにしたい。そんなことを考えている。
途中泣いてしまうこともあったけど、就寝前に読むにもよい、穏やかな物語でした。
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前に読んだ『まゆみのマーチ』。